それはそれは目まぐるしい速度さ。
今夜くらいアパートの外壁を打ち付ける痛々しい風の音に隠れ、鼻歌の一つや二つ許してくれよ。今夜くらいあの安如泰山なコンクリートの街をハロウィンのクラブみたいに揺らしてくれよ。今夜くらい肘つっぱりっぱなしのあいつらの力みをとっぱらってやってくれよ。
着飾りなんてするだけ虚しいと教えてくれ。
真正面から吹き荒らして俺らの正装なんて片っ端から意味ないと否定してくれ。
つまるところ、今夜に限らず、誰かがつまらないと感じるそこに、君はいてくれ。
五十鈴川でカッケー濁流をみせてくれよ。
河川敷、浸水しちゃうくらいのさ。
俺に可笑しいものを見せてちょうだい。
けど、くじけそうな人には優しくしてね。弱々しい人には、その背中に吹いてあげてほしい。励ますの得意そうだよ、君は。
そしたらさ、
たぶん俺ら、いい友達になれると思うんだ。