水垢浮かぶ鏡があからさまに〝寝起き〟といったようなふてっこい表情とそのド真ん中に座る潰れっ鼻を映し、「これは俺だ」と確認する。朝が来たってまぶたの裏は居心地が良くて、その余白を埋める作業を永遠に続行していたい。
夢の中での俺はアルビノの子鹿で、翠色の湖の畔に住んでいて、概ねマーゴット・ロビーといったような乙女に飼われており、たらふく贅沢三昧である。
けども日がのぼる途端にうつつはやってきて、俺のケツを叩いたり、俺の頬を抓ったり、時たまインターホンを押してきやがる。
起きなきゃ!
五月せえし、痛えし、うぜえのに、俺が住むのはここだ。紛れもなく俺が踏んでいる地面はここにある。起きねば!
そして起きたら、お国には金を払わなきゃならんし、不在着信には折り返さねばならんし、息は吸って吐かねばならんし、バイトには行かねばならん。
俺は、俺であることを忘れんために風呂ではかなり大声で歌を歌うし、真夜中の商店街では夢遊病ばりの闊歩をみせるし、イヤホンを耳にさしたらオリジナルのステップだって披露しちゃう。
そして活字というのは、俺の生活にさほど寄り添っているというわけでも無く、けども、俺の奥の1番大切にしている部分を守ってくれているような気がする。支離滅裂でごめん。
ウオーこんなもん、文学でもなんでもない。
隣で、起きざまの君の温もりを忘れたら終わりだ。
俺は俺で居なくちゃ。
君も君で居てな。
ハレルヤ!